有料老人ホームとデイサービスが一体型施設が多い理由とは?

高齢者の介護施設選びの中で、よく目にするのが「有料老人ホーム+デイサービス併設型」の施設です。施設のパンフレットや見学の案内でも、「デイサービスが併設されています」と説明されることが多くなっています。

では、なぜこのような一体型の施設が増えているのでしょうか?この記事では、背景やメリット・デメリット、注意点について詳しく解説していきます。


一体型が多い理由①:介護保険制度上の仕組み

有料老人ホーム(特に住宅型)は、「介護付き」とは違い、施設の中で直接介護サービスを提供できるわけではありません。そのため、介護が必要な方には、訪問介護やデイサービスといった外部サービスを組み合わせて対応する必要があります。

その中でも、日中の活動や入浴・リハビリを提供できる「デイサービス」は非常に相性がよく、住宅型有料老人ホームと一緒に運営されることが多くなっています。


一体型が多い理由②:職員の効率的な配置

有料老人ホームとデイサービスを別々に運営するよりも、一体型にすることでスタッフを効率的に配置できます。たとえば、日中はデイサービスで働き、夜間や朝方はホームの業務を担当するといった兼務体制を取っている施設もあります。

これは人手不足が続く介護業界において、限られた人材でサービスを維持するための現実的な運営方法でもあります。


一体型が多い理由③:収益面でのメリット

デイサービスは通所介護として介護報酬が得られるため、施設全体の収益を安定させる手段としても有効です。 特に、要介護度が軽い方が多い住宅型有料老人ホームでは、日中の介護サービス提供によって収益源を増やすことができ、経営的なメリットがあります。


一体型施設の実態をデータで見る

厚生労働省の調査によると:

  • **住宅型有料老人ホームの約79.1%**が、デイサービスなどの介護・医療サービスを併設または隣接
  • **サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)では約83.4%**が同様に併設
  • 一方、**特定施設(介護付き有料老人ホーム)は23.7%**と併設割合は少なめ

また、株式会社TRデータテクノロジーの調査では:

  • 2019年以前に設立されたサ高住のデイサービス併設率:約70%
  • 2020年以降に設立された施設では:約59%に減少

デイ併設率は徐々に減少傾向にあるものの、依然として高い水準を保っており、現場では今も主流の形態であることがわかります。


一体型施設ならではの注意点

● デイ定休日でも利用者が…?

一部の施設では、デイサービスが「休み」の日であっても、利用者がそのままデイフロアで1日を過ごしているケースがあります。

実はこれ、介護保険上は「デイサービスの提供」とみなされないにもかかわらず、実質的にフロアを使用しているため、形式上は違法またはグレーな対応とされています。

なぜ起こるかというと:

  • ホーム側の職員配置が十分でない
  • デイフロアの方が広く、使い勝手がよい
  • 入居者の日常生活リズムが崩れにくいため

といった事情が背景にあります。


家族として気をつけたい視点

こうした運営の実態を「良い」ととるか「不適切」ととるかはご家庭によって異なります。ただし、

  • デイサービスの定休日の過ごし方
  • 職員の配置人数や体制
  • 契約の範囲と実際の運用の差

を見学時に確認することは非常に重要です。


まとめ:見えてきたら、判断するのは家族

有料老人ホームとデイサービスの一体型施設は、利便性と効率の良さを追求した運営スタイルです。しかしその裏では、人手不足や収益性の問題、そして制度上の“ズレ”が見え隠れします。

施設選びの際は、「何が良い・悪い」ではなく、現場の実情を知った上で、家族として納得できるかどうかを大切にしてください。

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この記事を書いた人

はじめまして。
当ブログ「ひとりじゃない おうち介護」を見ていただいてありがとうございます。

介護福祉士と作業療法士の資格をもち、これまで医療・介護の現場で10年以上の経験を積んできました。
現場では、在宅支援、施設ケア、認知症ケアに携わる一方、訪問看護ステーションにて管理者補佐として裏方業務・請求業務にも従事してきました。

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