「お父さんの訪問看護、介護保険じゃなくて医療保険が使えるって言われたけど、どういうこと?」
「別表7って聞いたことあるけど、うちの家族は当てはまる?」
在宅介護をしていると、こんな疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。
訪問看護は原則として介護保険が優先されますが、特定の疾患・状態に該当する場合は医療保険での算定が認められています。その根拠となるのが、健康保険法に定められた「別表7」です。
この記事では、訪問看護に関わる医療従事者・ケアマネジャー・介護中のご家族に向けて、別表7の対象疾患一覧・算定のしくみ・注意点をわかりやすく解説します。
✅ この記事でわかること
- 別表7の対象疾患19種(印刷用一覧つき)
- 適用されるとどんなメリットがあるか
- 実際に医療保険で算定するための手順
- パーキンソン病など条件付き疾患の注意点
- 別表8との違い
- 家族が知っておくべきポイント
- よくある質問(FAQ)
Contents
別表7とは?
「別表7」とは、厚生労働大臣が定める疾病等(別表第七)の略称です。健康保険法に基づく告示(平成18年厚生労働省告示第188号)に定められています。
通常、介護認定を受けている方の訪問看護は介護保険が優先されます。しかし、別表7に該当する疾患・状態がある場合は、介護認定の有無にかかわらず医療保険が優先されます。
💡 ポイント:別表7は「医療保険で訪問看護を算定できる根拠」となる重要な制度です。
| 項目 | 通常の訪問看護 | 別表7該当の場合 |
|---|---|---|
| 保険の種類 | 介護保険優先 | 医療保険優先 |
| 週の訪問回数 | ケアプランの範囲内 | 週3回(複数事業所可) |
| 複数ステーション | 原則1か所 | 2か所まで算定可能 |
| 訪問看護指示書 | 必要 | 必要(通常指示書でOK) |
別表7対象疾患一覧(印刷用)
以下の19疾患・状態が別表7の対象です。印刷してご活用ください。
| No. | 対象疾患・状態 | 備考 |
|---|---|---|
| 1 | 末期の悪性腫瘍(がん末期) | 医師が末期と判断した場合 |
| 2 | 多発性硬化症 | |
| 3 | 重症筋無力症 | |
| 4 | スモン | |
| 5 | 筋萎縮性側索硬化症(ALS) | |
| 6 | 脊髄小脳変性症 | |
| 7 | ハンチントン舞踏病 | |
| 8 | 進行性筋ジストロフィー症 | |
| 9 | パーキンソン病 | ヤール分類ステージIII以上かつ生活機能障害度II度以上 |
| 10 | 多系統萎縮症(シャイ・ドレーガー症候群など) | |
| 11 | プリオン病 | |
| 12 | 亜急性硬化性全脳炎 | |
| 13 | ライソゾーム病 | |
| 14 | 副腎白質ジストロフィー | |
| 15 | 脊髄性筋萎縮症 | |
| 16 | 球脊髄性筋萎縮症 | |
| 17 | 慢性炎症性脱髄性多発神経炎 | |
| 18 | 後天性免疫不全症候群(AIDS) | |
| 19 | 頚髄損傷 | |
| 20 | 人工呼吸器使用状態 | 疾患名ではなく状態 |
⚠️ 注意:上記はあくまで代表的な記載です。実際の適用については主治医・訪問看護ステーションにご確認ください。
パーキンソン病の適用条件について
パーキンソン病は別表7に含まれますが、すべての患者が対象になるわけではありません。以下の条件を両方満たす必要があります。
- ✅ ヤール分類 ステージIII以上
- ✅ 生活機能障害度 II度以上
ヤール分類の目安
| ステージ | 状態の目安 | 別表7対象 |
|---|---|---|
| I | 片側のみに症状。日常生活への支障はほぼない | ❌ |
| II | 両側に症状。バランス障害なし | ❌ |
| III | 軽~中等度の両側性症状。姿勢反射障害あり。自立可能 | ✅(II度以上と併せて) |
| IV | 高度障害。介助なしでの歩行は可能 | ✅ |
| V | 車椅子または寝たきり。完全に介助が必要 | ✅ |
訪問看護指示書への記載例
指示書には診断名と重症度を明記する必要があります。
パーキンソン病(ヤール分類ステージIV、生活機能障害度II度)
💡 「パーキンソン病」とだけ書かれている場合、レセプト審査で疑義照会が来る可能性があります。必ずステージと障害度を記載してもらいましょう。
別表7が適用されるとどうなる?
別表7に該当すると、通常の訪問看護とは異なるルールが適用されます。
主なメリット
- ✅ 医療保険で算定されるため、介護保険の区分支給限度額に影響しない
- ✅ 週3日を超えた訪問が可能になる(通常は週3回まで)
- ✅ 複数の訪問看護ステーション(最大2か所)を利用できる
- ✅ 長時間訪問(90分超)も算定可能な場合がある
自己負担について
医療保険適用の場合、自己負担は通常1〜3割です。高額療養費制度の対象にもなります。介護保険との比較については、担当のケアマネジャーまたは訪問看護ステーションにご相談ください。
実際に医療保険で算定するための手順
別表7に該当する場合の算定の流れをステップで確認しましょう。
- 主治医が別表7疾患と診断
診断名・重症度(必要に応じて)を医療記録に記載 - 訪問看護指示書の発行
主治医が「訪問看護指示書」を作成。別表7疾患名と重症度を必ず明記 - 訪問看護ステーションへの連絡
「医療保険での訪問看護が必要」と伝え、指示書を提出 - 医療保険でのサービス開始
ステーションが医療保険でレセプトを作成・請求 - ケアマネジャーへの情報共有
介護保険のケアプランとの整合性確認のため連絡を入れる
💡 注意:ケアマネジャーは「訪問看護が医療保険に切り替わった」ことを把握しておく必要があります。ケアプランの修正が必要になる場合があります。
訪問看護指示書との関係
別表7疾患の場合、訪問看護を開始するために必要な書類は以下のとおりです。
| 場面 | 必要な指示書 |
|---|---|
| 通常の訪問看護開始時 | 訪問看護指示書(有効期間:最長6か月) |
| 急変・一時的な頻回訪問が必要な場合 | 特別訪問看護指示書(有効期間:14日以内) |
別表7の場合、通常の訪問看護指示書のみで医療保険算定が可能です。特別訪問看護指示書は急変時などに追加で交付されます。
別表7と別表8の違い
訪問看護の医療保険適用には「別表7」のほかに「別表8」という制度もあります。
| 別表7 | 別表8 | |
|---|---|---|
| 内容 | 特定の疾患・状態 | 特定の処置・状態(気管カニューレ、留置カテーテルなど) |
| 保険 | 医療保険優先 | 医療保険優先 |
| 週の訪問回数 | 週3回(複数事業所可) | 週3回(複数事業所可) |
| 特徴 | 疾患名で判断 | 処置・医療依存度で判断 |
別表8の詳細については、訪問看護の「別表8」とは?対象処置と算定のポイントをご覧ください。
介護する家族が知っておくべきこと
在宅介護をしているご家族にとって、別表7は「知っておくと損のない制度」です。
家族が確認しておきたいポイント
- ✅ 主治医に「別表7に該当しますか?」と確認する
診断名があっても、医師が指示書に明記していない場合があります。 - ✅ 訪問看護ステーションに相談する
「医療保険での訪問看護は使えますか?」と聞くだけでOKです。 - ✅ ケアマネジャーに伝える
医療保険での訪問看護に切り替わると、介護保険のケアプランに影響することがあります。 - ✅ 自己負担の変化を確認する
介護保険と医療保険では自己負担の計算方法が異なります。
💡 別表7に該当する疾患があっても、すぐに医療保険に切り替わるわけではありません。主治医・訪問看護ステーション・ケアマネジャーと連携して確認することが大切です。
注意点
- ✅ 診断名と重症度を指示書に明記してもらう(特にパーキンソン病)
- ✅ 疑義照会への備えとして、医師の記録・指示書の写しを保管する
- ✅ 末期がんは「末期」であることを医師が明確に判断・記録している必要がある
- ✅ 人工呼吸器は「疾患名」ではなく「状態」での適用。呼吸器の種類・設定も記録する
- ✅ 別表7疾患でも、状態が安定していれば介護保険に戻る場合がある(医師の判断による)
よくある質問(FAQ)
Q1. 介護認定を受けていても医療保険で訪問看護は使えますか?
A. はい、使えます。別表7に該当する疾患・状態がある場合は、介護認定の有無にかかわらず医療保険が優先されます。介護保険の区分支給限度額を気にせず訪問看護を受けられる点が大きなメリットです。
Q2. 別表7に該当する疾患があれば、自動的に医療保険になりますか?
A. 自動的には切り替わりません。主治医が訪問看護指示書に疾患名・重症度を明記し、訪問看護ステーションが医療保険で算定する手続きを取る必要があります。まずは主治医や訪問看護ステーションにご相談ください。
Q3. パーキンソン病でも別表7に当てはまらない場合がありますか?
A. あります。パーキンソン病は「ヤール分類ステージIII以上かつ生活機能障害度II度以上」が条件です。軽症の場合(ステージI・IIなど)は別表7の対象外となり、介護保険での訪問看護になります。
Q4. 別表7に該当すると、訪問看護を毎日受けられますか?
A. 通常は週3回までが原則です。ただし、末期がんや特別訪問看護指示書が交付された場合は毎日の訪問も可能です。また、複数のステーションを利用することで訪問回数を増やすことができます。
Q5. 訪問看護ステーションを複数使えますか?
A. 別表7に該当する場合は、最大2か所の訪問看護ステーションを同時に利用できます(通常は1か所のみ)。必要なケアの内容によって、ステーションを使い分けることが可能です。
Q6. 別表7と別表8の両方に該当することはありますか?
A. あります。たとえばALS(筋萎縮性側索硬化症)で人工呼吸器を使用している場合は、別表7(ALS)と別表8(人工呼吸器使用状態)の両方に該当します。この場合も医療保険で算定します。
Q7. 在宅がん末期の場合、訪問看護はどのくらい利用できますか?
A. がん末期(末期の悪性腫瘍)の場合は別表7の対象となり、医療保険で訪問看護が受けられます。特別訪問看護指示書が交付されれば毎日の訪問も可能です。在宅での看取りを希望するご家族にとっても、積極的に活用できる制度です。
まとめ
訪問看護の「別表7」について、改めて要点を整理します。
- 別表7とは、医療保険での訪問看護算定を認める19〜20の疾患・状態の一覧
- 介護認定を受けていても、別表7該当疾患があれば医療保険が優先される
- 週3回を超える訪問、複数ステーションの利用が可能になる
- パーキンソン病はヤール分類・生活機能障害度の条件を満たす必要がある
- 指示書への診断名・重症度の明記が算定の鍵
- 別表8(処置・状態による適用)との違いも理解しておくとよい
在宅での療養・介護において、訪問看護は心強いサポートです。「うちの家族は別表7に当てはまるかも」と思ったら、まずは主治医や訪問看護ステーションに相談してみましょう。
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