「別表8に該当するって言われたけど、何が変わるの?」——在宅で家族の介護をされている方や、訪問看護を利用し始めた方から、よくこんなご質問をいただきます。
訪問看護は原則として介護保険が優先されますが、特定の医療処置や管理が必要な状態の場合は、医療保険で算定できる特例があります。その特例のひとつが「別表8」です。
この記事では、別表8の対象状態・医療保険算定のポイント・別表7との違いを、作業療法士・介護福祉士として訪問看護ステーションに関わってきた筆者がわかりやすく解説します。印刷してご活用いただける一覧表もあります。
Contents
💡 別表8とは?まず基本を押さえよう
「別表8」とは、厚生労働大臣が定める疾病等の別表第8号(通称:別表8)のことで、在宅で特定の医療管理・処置を受けている状態にある利用者が対象です。
重要なのは、別表8は「疾患名(病名)」ではなく「状態・処置内容」で判断されるという点です。たとえば「がん末期だから該当する」のではなく、「在宅悪性腫瘍等患者指導管理を受けている状態だから該当する」というように、現在行われている在宅医療管理の内容が基準になります。
✅ 別表8が適用されると何が変わるのか
別表8に該当する場合、以下の特例が認められます。
| 項目 | 通常の介護保険訪問看護 | 別表8該当時(医療保険) |
|---|---|---|
| 保険種別 | 介護保険 | 医療保険 |
| 週の訪問回数制限 | ケアプランによる | 制限なし(週3回超えてもOK) |
| 複数ステーション利用 | 原則1か所 | 2か所まで利用可能 |
| 長時間訪問看護加算 | なし | 算定可能 |
| 特別訪問看護指示書 | 必要(週4回以上の場合) | 不要 |
🏥 別表8の対象となる14の状態【印刷用一覧】
別表8の対象は以下の14の状態です。いずれも、主治医から在宅指導管理を受けている状態が前提となります。
| No. | 対象となる状態 | 具体的なイメージ |
|---|---|---|
| 1 | 在宅悪性腫瘍等患者指導管理 | 在宅でがん(悪性腫瘍)の疼痛管理・点滴管理などを受けている |
| 2 | 在宅気管切開患者指導管理 | 気管切開をして在宅で管理指導を受けている |
| 3 | 気管カニューレを使用している状態 | 気管切開部にカニューレを装着中 |
| 4 | 留置カテーテルを使用している状態 | 尿道バルーンカテーテルなどを留置中 |
| 5 | 在宅自己腹膜灌流指導管理 | 腹膜透析(CAPD)を自宅で行っている |
| 6 | 在宅血液透析指導管理 | 在宅で血液透析を行っている |
| 7 | 在宅酸素療法指導管理 | HOT(在宅酸素療法)を使用中 |
| 8 | 在宅中心静脈栄養法指導管理 | IVH(中心静脈栄養)を在宅で実施中 |
| 9 | 在宅成分栄養経管栄養法指導管理 | 経鼻胃管・胃瘻などで経管栄養を実施中 |
| 10 | 在宅自己導尿指導管理 | 自己導尿(CIC)を行っている |
| 11 | 在宅人工呼吸指導管理 | 人工呼吸器(侵襲的・非侵襲的)を使用中 |
| 12 | 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理 | CPAP療法を在宅で実施中 |
| 13 | 在宅自己疼痛管理指導管理 | 自己管理型鎮痛ポンプ(PCA)を使用中 |
| 14 | 在宅肺高血圧症患者指導管理 | 在宅で肺高血圧症の管理指導を受けている |
💡 ポイント:上記の状態に該当するかどうかは、訪問看護指示書の記載内容や、主治医の判断によって確認されます。「自分は該当するの?」と思ったら、まず主治医か訪問看護ステーションに確認してみましょう。
📋 別表7と別表8の違いを比較
別表7と別表8はどちらも「医療保険で訪問看護を算定できる特例」ですが、対象の考え方が根本的に異なります。
| 比較項目 | 別表7 | 別表8 |
|---|---|---|
| 対象の基準 | 疾患名(病名)で判断 | 状態・処置内容で判断 |
| 代表例 | がん末期・ALS・パーキンソン病重症例など | 気管カニューレ使用・在宅酸素療法・経管栄養など |
| 週の訪問回数 | 制限なし | 制限なし |
| 2か所利用 | 可能 | 可能 |
| 長時間加算 | 算定可能 | 算定可能 |
| 両方に該当する場合 | いずれか一方が適用(重複算定は不可) | |
➡️ 別表7(疾患名が対象)については、こちらの記事で詳しく解説しています。
🏥 訪問看護の「別表7」とは?対象疾患と医療保険算定のポイント【印刷用一覧つき】
📝 医療保険で算定するための手順(ステップ解説)
「別表8に該当するかも」とわかったら、実際に医療保険で訪問看護を算定するまでの流れを確認しましょう。
STEP 1:主治医に状態を確認する
まず、かかりつけ医(主治医)に「別表8の対象状態に該当しますか?」と確認します。主治医が判断し、該当する場合は訪問看護指示書に対象状態を明記してもらいます。
💬 主治医への相談例:
「先生、在宅酸素療法を使っているのですが、訪問看護を医療保険で利用できると聞きました。別表8に該当しますか?訪問看護指示書に記載いただけますか?」
STEP 2:訪問看護指示書を発行してもらう
主治医から訪問看護指示書を発行してもらいます。この指示書に別表8の対象状態が記載されていることが、医療保険算定の根拠となります。
STEP 3:訪問看護ステーションに相談・契約する
訪問看護指示書を持って、訪問看護ステーションと契約します。別表8該当の場合は医療保険で算定されるため、介護保険のケアプランは不要です(ケアマネジャーへの連絡は必要な場合があります)。
STEP 4:必要に応じて2か所目のステーションも利用
別表8該当の場合、2か所の訪問看護ステーションから同時にサービスを受けることができます。医療的ニーズが高い場合や、週の訪問回数が多い場合に活用できます。
👪 在宅介護をされているご家族へ
別表8に該当する状態は、気管カニューレや人工呼吸器、経管栄養など、医療的ケアが必要な重度の状態です。在宅で介護されているご家族にとって、訪問看護の回数を増やせることは大きな安心につながります。
以下のような場合は、ぜひ主治医や訪問看護ステーションに相談してみてください。
- 「週3回では訪問看護が足りない気がする」
- 「医療的ケアが多くて、1か所のステーションでは対応しきれない」
- 「夜間や緊急時にも対応できる体制を整えたい」
- 「今の訪問看護が介護保険になっているが、医療保険のほうが向いているか確認したい」
❓ よくある質問(FAQ)
Q1. 別表7と別表8の両方に該当する場合はどうなりますか?
A. 両方に該当する場合でも、いずれか一方のみ適用されます。重複して算定することはできません。どちらの区分で算定するかは、主治医と訪問看護ステーションが相談して決定します。
Q2. 別表8は自動的に適用されますか?
A. 自動的には適用されません。主治医が訪問看護指示書に対象状態を明記することが必要です。「該当する状態のはずなのに医療保険になっていない」という場合は、主治医や訪問看護ステーションに確認しましょう。
Q3. 別表8の対象になると、介護保険は使えなくなりますか?
A. 訪問看護については医療保険が優先されますが、他の介護保険サービス(訪問介護、デイサービスなど)は引き続き利用できます。介護保険と医療保険は、サービスの種類ごとに適用が決まります。
Q4. 在宅酸素療法(HOT)を使っていれば必ず別表8に該当しますか?
A. 在宅酸素療法指導管理を受けている状態であれば別表8の対象になります。ただし、主治医から在宅酸素療法指導管理の指示が出ていることが条件です。酸素を使っているだけでは不十分で、主治医の管理指導が行われていることが必要です。
Q5. 別表8該当の場合、訪問看護の費用(自己負担)はどうなりますか?
A. 医療保険での算定となるため、医療保険の自己負担割合(1〜3割)が適用されます。介護保険との自己負担の比較は個人の状況によって異なりますので、訪問看護ステーションや主治医に相談することをおすすめします。
Q6. 別表8の対象状態が改定で変わることはありますか?
A. はい、診療報酬改定(2年ごと)のタイミングで変更される可能性があります。最新の情報は主治医や訪問看護ステーション、または厚生労働省のウェブサイトでご確認ください。この記事は2025年時点の情報をもとに作成しています。
📌 まとめ:別表8のポイント
- ✅ 別表8は「疾患名」ではなく「状態・処置内容」が対象
- ✅ 対象は14の在宅医療管理状態(気管カニューレ・在宅酸素・経管栄養など)
- ✅ 該当すると週の訪問回数制限がなくなる
- ✅ 2か所の訪問看護ステーションから利用可能
- ✅ 長時間訪問看護加算が算定できる
- ✅ 適用には主治医の訪問看護指示書への明記が必要
- ✅ 別表7・別表8両方に該当しても重複算定は不可
「うちの家族は該当するのかな?」「今の訪問看護の回数が足りない」と感じているなら、まずは主治医か訪問看護ステーションに相談してみてください。制度を正しく活用することで、より安心した在宅療養生活につながります。
➡️ 別表7(疾患名が対象の特例)についてはこちら:訪問看護の「別表7」とは?対象疾患と医療保険算定のポイント
