【経験談シリーズ】作業療法士1年目、医師との距離感がわからなかった話

――現場の“あるある”から学んだコミュニケーションのコツ

「医師とどう関わればいいのか、わからない」
作業療法士として働き始めた1年目、私の頭の中には常にそんな不安がありました。

患者さんのリハビリはできても、医師と話すとなると緊張で固まる。
病院という専門職の集まる場所では、医師とのコミュニケーションは避けて通れません。でも、最初は本当にうまくいきませんでした。

今回は、私が新人時代に経験した“あるある”な失敗と、そこから得た学びを紹介します。


■ ケース①:「調子どう?」と唐突に聞かれてテンパる

入職して間もない頃。病棟内で患者さんと歩行練習をしていたとき、主治医がたまたま通りかかりました。
白衣姿の医師は私をちらっと見て、「どう?」と一言。

――「どう」とは、何が? 歩行? 回復状況? 状態?
頭が真っ白になった私は、「えっと、まぁ…普通です」とよくわからない返事をしてしまいました。

すると医師は「それじゃわからんよ」とひと言。
一瞬で空気が凍りつき、その後の会話はなく立ち去られてしまいました。

学び:医師の“ざっくり質問”には、観察した事実を端的に返すのが大切。


■ ケース②:患者さんが痛がっていた足を医師がゴリッ

ある患者さんが「足が痛い」と訴えていたため、様子を見ながらリハビリを進めていた日の午後。
回診に来た主治医が、何の前触れもなくその足を持ち上げて大きく関節を動かしました。

患者さんは「痛いっ!」と悲鳴。私は思わずビクッとして言葉が出ず、気まずい空気が流れました。

医師に悪気があったわけではなく、評価の一環だったのでしょう。
でも、患者さんと関係性が築けていない場面では、「専門的な判断」も拒否されやすいという現場の難しさを感じました。

学び:痛みや不安など、日頃のリハ情報はこまめに医師に共有しておくこと。


■ ケース③:医師同士のステーションバトルを耳で楽しむ

記録入力中のステーションで、突然背後から怒気を含んだ声が。
振り返ると、医師同士が真剣な顔で言い合っているではありませんか。

「いや、それはそっちが…」「でもこっちは聞いてない!」――本気の口論。
職員は誰も反応せず静かに仕事を続け、私も手は動かしつつ耳だけ全開で情報収集。

学び:多職種連携の医療現場にも、普通に“人間関係の衝突”はある。
それも含めて“リアルな職場”だということを知った出来事でした。


■ ケース④:2年目で気づいた「医師も人だ」ということ

1年目を乗り越えて少しずつ顔を覚えられ、飲み会や患者カンファレンスを通じて医師と話す機会が増えていきました。
そんなある日、意外なところから会話のきっかけが生まれました。

それは、「PayPayのキャッシュバックボーナス」の話題。

「最近PayPayやばくない? 〇〇%戻ってくるってやつ」「あー俺それで○○買った」――
たまたまその話を振ったことで、職場の医師が笑いながら返してくれたのです。
そこからは自然と雑談も交わせるようになりました。

また、ある医師から言われた印象的なひと言がこちら:

「リハビリの子って、なんか変に難しく話そうとするんだよね。普通に話してくれていいのに」

私はハッとしました。
専門職として“ちゃんと説明しなきゃ”と力んでいたけれど、それが逆に壁をつくっていたのかもしれません。

学び:「専門性」は“言葉”ではなく、“伝える姿勢”にあらわれる。


■ まとめ:医師も人。自分も怖がりすぎなくて大丈夫

作業療法士にとって、医師との関わりは緊張の連続です。
でもその中で、以下のようなことを少しずつ身につけていくと、自然とコミュニケーションがしやすくなります。


✔ 医師とのやりとりで意識したいこと

  • 「どう?」と聞かれたら、“今の観察内容”を一言で伝える習慣を。
  • わからないときは正直に「確認してまた報告します」でOK。
  • 専門用語にこだわらず、まずは“普通に”会話してみる。

最初は失敗も多いけれど、医師も同じ職場の人間です。
構えすぎず、でも敬意を持って関わることで、少しずつ関係は築けるようになります。

だからこそ新人OTのあなたに伝えたいのは、
**「自分を下げすぎず、でも無理に背伸びもせず、今の自分で堂々と関わっていい」**ということ。

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この記事を書いた人

はじめまして。
当ブログ「ひとりじゃない おうち介護」を見ていただいてありがとうございます。

介護福祉士と作業療法士の資格をもち、これまで医療・介護の現場で10年以上の経験を積んできました。
現場では、在宅支援、施設ケア、認知症ケアに携わる一方、訪問看護ステーションにて管理者補佐として裏方業務・請求業務にも従事してきました。

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