介護保険制度の中で、「総合事業」や「事業対象者」という言葉を耳にすることがあります。
しかし、「要支援とは何が違うの?」「介護保険は使えるの?」など、内容がわかりづらいと感じる人も多いのではないでしょうか。
この記事では、総合事業とは何か?事業対象者とは誰か?そして、使えるサービスや注意点について、初めての人にもわかりやすく解説します。
「総合事業」とは何か?
正式には「介護予防・日常生活支援総合事業」といいます。
平成27年(2015年)から始まった制度で、要支援1・2の人やそれに準じる高齢者(事業対象者)を地域で支える仕組みです。
厚生労働省が全国共通のサービスを提供していた従来の「予防給付」に代わって、市区町村が中心となって運営する仕組みに変わりました。
総合事業の対象となる人
総合事業の対象者は主に以下の2つです:
① 要支援1・2の認定を受けた人
⇒ 従来と同様に、介護予防サービスを利用できます。
② 事業対象者と判定された人
⇒ 介護保険の要支援認定は受けていないが、「今後要介護状態になるリスクがある」と市町村が判断した人です。
「事業対象者」って何?
事業対象者とは、要支援の認定を受けていないけれど、基本チェックリストで生活機能の低下が見られる高齢者です。
✅ 判定の流れ
- 市区町村に相談する
- 「基本チェックリスト(25項目)」に回答
- 一定の項目に該当すると「事業対象者」として総合事業のサービスが利用できるようになる
基本チェックリストの例(一部)
質問例 | 回答が「はい」だとリスクあり |
---|---|
6ヶ月以内に転倒したことがあるか? | ✅ |
外出頻度が減っているか? | ✅ |
2kg程度の買い物が持てないか? | ✅ |
体重が半年で2~3kg以上減ったか? | ✅ |
物忘れが気になるか? | ✅ |
このような日常生活のちょっとした変化やリスクに気づき、早めに介入して重度化を防ぐのが「総合事業」の目的です。
使えるサービス内容
事業対象者・要支援者ともに、基本的には同じ「介護予防サービス」を利用できます。
🏠 訪問型サービス(訪問介護に相当)
- 掃除、洗濯、買い物、調理などの生活援助
- 身体介護は原則対象外(※一部市町村で実施あり)
🚌 通所型サービス(デイサービスに相当)
- 軽度な体操・リハビリ
- 栄養改善の取り組み
- 社会参加を目的とした活動(レク、趣味活動など)
🦽 その他の支援
- 一部の福祉用具貸与(例:歩行器、手すり)
- 自立支援・介護予防のための地域サロン活動への参加
※内容や利用の条件は市区町村によって違います
利用の流れ(事業対象者)
- 地域包括支援センターなどに相談
- チェックリストで判定を受ける
- 該当すれば「総合事業」の利用対象に
- ケアマネジャーではなく「地域ケア会議」などで支援内容を検討
- サービス開始
要支援認定との違い
比較項目 | 要支援1・2 | 事業対象者 |
---|---|---|
認定方法 | 介護認定調査+医師の意見書 | 基本チェックリスト |
保険証の有無 | あり(介護保険証) | 原則なし(※自治体により異なる) |
支援調整者 | ケアマネジャー | 地域包括支援センターなど |
利用できるサービス | 訪問・通所・福祉用具など | 同様(ただし簡易型が多い) |
保険給付 | あり(介護予防給付) | なし(地域支援事業) |
注意点・よくある誤解
❌「介護保険が使えないから損?」
→ 総合事業も市の負担で行われており、自己負担は原則1割で十分な支援を受けられます。
❌「事業対象者って軽く見られている?」
→ 実際は「今のうちに予防して介護状態に進まないよう支援する」大切な位置づけです。
❌「市区町村によって対応が違いすぎる」
→ これは本当です。総合事業は各市町村が独自に運営しているため、利用できるサービス・事業所数・内容に差があります。早めに相談するのがポイントです。
まとめ
項目 | 要点まとめ |
---|---|
総合事業とは | 要支援者と事業対象者を地域で支える制度 |
事業対象者とは | チェックリストで生活機能の低下が見られた人 |
利用できるサービス | 訪問型・通所型サービスなど介護予防中心 |
要支援との違い | 認定方法・調整者・制度の枠組みに差がある |
注意点 | 地域差が大きい、制度の誤解に注意 |
📌 最後に
「まだ介護までは必要ないけれど、なんとなく不安…」という人ほど、この総合事業をうまく活用することで、生活の質を保ち、自立を長く続けられます。
介護保険は「困ってから使うもの」ではありません。
気になることがあれば、まずは地域包括支援センターへ気軽に相談してみましょう。
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