「訪問看護を利用することになったけど、医療保険が使えると言われた。でも別表7?別表8?自分はどっちに当てはまるの?」
在宅介護の現場でよくある疑問です。訪問看護は原則として介護保険を使うのですが、特定の疾患や状態に該当すると医療保険が優先的に適用されます。その判断基準が「別表7」と「別表8」です。
この記事では、別表7と別表8の違いを比較しながら、どちらに該当するのかを確認できるチェックリストも含めてわかりやすく解説します。筆者は訪問看護ステーションの管理者補佐を経験した作業療法士・介護福祉士です。
※別表7・別表8それぞれのより詳しい解説は、以下の専用記事もあわせてご覧ください。
Contents
別表7・別表8とは?まず基本をおさえよう
訪問看護を利用するとき、通常は介護保険が優先されます。しかし、厚生労働大臣が定める「特定の疾患・状態」に該当する場合は、例外として医療保険が優先されます。
その「特定の疾患・状態」を列挙したのが、別表7と別表8です。正式名称は以下のとおりです。
- 別表7:「厚生労働大臣が定める疾病等」(診療報酬の算定方法の別表第七)
- 別表8:「厚生労働大臣が定める状態等」(診療報酬の算定方法の別表第八)
一言でいうと、別表7は「疾患名」、別表8は「医療管理の状態」で分類されています。
別表7と別表8の違いを比較表で確認
まず、二つの違いを一覧で比較してみましょう。
| 別表7 | 別表8 | |
|---|---|---|
| 判断基準 | 疾患名(病名)で判断 | 医療管理の状態で判断 |
| 対象 | 19の特定疾患(+厚労大臣指定) | 8つの医療管理状態(+その他) |
| 保険の切り替え | 介護認定があっても医療保険が優先 | 単独では介護保険のまま※ |
| 訪問回数 | 週4回以上・複数事業所OK | 週4回以上・複数事業所OK |
| 長時間訪問 | 特例で可能 | 特例で可能 |
| 判断者 | 主治医(訪問看護指示書) | 主治医(訪問看護指示書) |
※ 別表8のみに該当する場合、医療保険への切り替えではなく「特別な医療管理が必要」として訪問回数の特例が適用されます。ただし別表7にも重複して該当する場合は医療保険に切り替わります。
別表7の疾患一覧(19の特定疾患)
別表7に該当する疾患は、主に神経難病・末期がん・重度の進行性疾患が中心です。要介護認定を受けていても、以下の疾患に該当すれば訪問看護は自動的に医療保険の適用となります。
| No. | 疾患名 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 1 | 末期の悪性腫瘍 | がんの末期状態 |
| 2 | 筋萎縮性側索硬化症(ALS) | 運動神経が徐々に失われる難病 |
| 3 | 後天性免疫不全症候群 | HIV感染によるAIDS |
| 4 | 重症筋無力症 | 神経筋接合部の障害による筋力低下 |
| 5 | スモン | キノホルム剤による神経障害 |
| 6 | プリオン病 | 脳に変性をきたす難病 |
| 7 | 亜急性硬化性全脳炎 | 麻疹ウイルスによる脳炎 |
| 8 | ライソゾーム病 | 酵素の欠損による代謝異常 |
| 9 | 副腎白質ジストロフィー | 脳・副腎の変性疾患 |
| 10 | 脊髄性筋萎縮症 | 脊髄の運動ニューロン変性 |
| 11 | 球脊髄性筋萎縮症 | 筋力低下・嚥下障害を伴う難病 |
| 12 | 慢性炎症性脱髄性多発神経炎 | 末梢神経の炎症性疾患 |
| 13 | 脊髄小脳変性症 | 小脳や脊髄が徐々に障害される |
| 14 | ハンチントン病 | 遺伝性の脳変性疾患 |
| 15 | 多発性硬化症・視神経脊髄炎 | 中枢神経の脱髄疾患 |
| 16 | 進行性筋ジストロフィー症 | 筋肉が徐々に衰える遺伝性疾患 |
| 17 | パーキンソン病関連疾患(重度) | 進行性核上性麻痺・多系統萎縮症・大脳皮質基底核変性症等 |
| 18 | 閉塞性動脈硬化症(重度) | 四肢の動脈硬化による血流障害 |
| 19 | その他、厚生労働大臣が定める疾病 | 告示により随時追加 |
パーキンソン病は重症度が高い場合のみ(Hoehn-Yahr分類のステージ3以上かつ生活機能障害度II度以上、またはそれに相当)別表7の対象となります。
📌 別表7の詳細解説はこちら:訪問看護の別表7とは?医療保険が使える19の特定疾患を詳しく解説
別表8の対象状態一覧(医療管理が必要な状態)
別表8は疾患名ではなく、医療的な管理が必要な「状態」で判断されます。次の8つの状態が該当します。
| No. | 対象状態 | 具体的な状況例 |
|---|---|---|
| 1 | 気管カニューレの使用 | 気管切開後にカニューレを装着している状態 |
| 2 | 留置カテーテルの使用 | バルーンカテーテル(尿道留置)を使用している状態 |
| 3 | 在宅酸素療法の実施 | HOT(在宅酸素)を使用している状態 |
| 4 | 中心静脈栄養法(IVH)の実施 | 経口摂取が困難でIVHで栄養管理している状態 |
| 5 | 真皮を越える褥瘡の存在 | NPUAP分類でステージ3以上の床ずれ |
| 6 | 人工肛門・人工膀胱の設置 | ストーマを造設している状態 |
| 7 | 在宅患者訪問点滴注射管理指導料の算定 | 週3日以上の点滴が必要な状態 |
| 8 | その他、特別な管理が必要な状態 | 医師が特別な管理が必要と判断した状態 |
📌 別表8の詳細解説はこちら:訪問看護の別表8とは?医療保険が使える医療管理状態を詳しく解説
あなたはどちら?別表7・別表8チェックリスト
「自分(または家族)がどちらに当てはまるか」を確認するためのチェックリストです。
✅ 別表7チェックリスト(疾患名で確認)
以下のいずれかの疾患と診断されている場合、別表7に該当する可能性があります。
- □ 末期のがん(悪性腫瘍)と診断されている
- □ ALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断されている
- □ パーキンソン病で重症(Hoehn-Yahr3以上)と判定されている
- □ 多系統萎縮症・進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症と診断されている
- □ 脊髄小脳変性症と診断されている
- □ 多発性硬化症・視神経脊髄炎と診断されている
- □ 進行性筋ジストロフィー症と診断されている
- □ 重症筋無力症と診断されている
- □ ハンチントン病・プリオン病などの神経変性疾患と診断されている
- □ 脊髄性筋萎縮症・球脊髄性筋萎縮症と診断されている
- □ 後天性免疫不全症候群(AIDS)と診断されている
- □ 閉塞性動脈硬化症(重度)と診断されている
➡ 1つでも当てはまる場合:別表7の可能性あり。主治医・訪問看護ステーションに確認を。
✅ 別表8チェックリスト(医療管理の状態で確認)
以下のいずれかの状態に現在ある場合、別表8に該当する可能性があります。
- □ 気管切開をしていてカニューレを使用している
- □ 尿道に留置カテーテル(バルーン)を入れている
- □ 在宅酸素(HOT)を使用している
- □ 中心静脈栄養(IVH・TPN)を実施している
- □ 深い床ずれ(真皮を越える褥瘡)がある
- □ 人工肛門(コロストミー)や人工膀胱(ストーマ)を設置している
- □ 週3日以上の点滴(訪問点滴)が処方されている
➡ 1つでも当てはまる場合:別表8の可能性あり。主治医・訪問看護ステーションに確認を。
よくある誤解4選:別表7・別表8の注意点
❌ 誤解1「介護認定を受けているから介護保険しか使えない」
→ 正しくありません。別表7に該当する疾患がある場合、要介護認定があっても医療保険が優先されます。介護保険と医療保険の両方を持っていても、別表7の疾患があれば訪問看護は医療保険から給付されます。
❌ 誤解2「別表8に当てはまれば医療保険になる」
→ 必ずしもそうではありません。別表8のみに該当する場合は、介護保険のままですが「特別管理加算」が算定されたり、長時間・高頻度の訪問が可能になる特例が適用されます。医療保険への切り替えには別表7の疾患も該当することが必要です。
❌ 誤解3「訪問看護は週3回まで」
→ 通常の訪問看護(介護保険)は週3回程度が上限ですが、別表7・別表8に該当すれば週4回以上の訪問や、複数の訪問看護ステーションの併用、1日複数回の訪問が可能になります。
❌ 誤解4「自分で申請しないといけない」
→ 別表7・別表8の認定は申請制ではありません。主治医が訪問看護指示書を発行する際に、これらに該当すると判断すれば自動的に適用されます。気になる場合は主治医や訪問看護ステーションに確認するだけでOKです。
別表7・別表8に該当した場合のメリット
別表7・別表8に該当すると、通常の訪問看護と比べてどのような違いがあるのでしょうか。
| 項目 | 通常の訪問看護(介護保険) | 別表7・8該当(医療保険) |
|---|---|---|
| 訪問回数 | 週3回程度が上限 | 週4回以上OK・上限なし |
| 複数ステーション | 原則1か所のみ | 2か所以上の同時利用OK |
| 1日の訪問回数 | 通常1回 | 1日複数回OK |
| 長時間訪問 | 通常30分〜1.5時間 | 長時間加算の適用あり |
| 費用の自己負担 | 介護保険の自己負担割合(1〜3割) | 医療保険の自己負担割合(1〜3割) |
| ケアプランとの関係 | ケアマネジャーが調整 | 主治医の指示が中心・ケアマネは補助的 |
医療保険の訪問看護は、介護保険の枠を超えた高頻度・高密度のケアが可能になります。病状が重い方や医療依存度が高い方が在宅でも十分なケアを受けられる仕組みです。
別表7・別表8に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 別表7と別表8の両方に当てはまる場合はどうなりますか?
A. 両方に該当する場合は、医療保険が適用されます。別表7の疾患と別表8の状態を両方持っている方は少なくありません(例:ALSで気管カニューレを使用しているケースなど)。いずれにせよ、訪問回数の特例が最大限に活用できます。
Q2. 別表7の疾患でも、状態が軽ければ介護保険になることはありますか?
A. 基本的には疾患名で判断されるため、状態の軽重にかかわらず医療保険が優先されます。ただし、パーキンソン病については重症度の基準(Hoehn-Yahr分類)があるため注意が必要です。
Q3. 精神科の訪問看護でも別表7・8は適用されますか?
A. 精神科訪問看護は別の仕組みで運用されており、別表7・8の適用は基本的に身体疾患の訪問看護が対象です。精神疾患の方の訪問看護については、別途「精神科訪問看護基本療養費」の制度があります。
Q4. 別表7に該当すると、ケアマネジャーは不要になりますか?
A. いいえ、ケアマネジャーは引き続き必要です。訪問看護は医療保険になりますが、他の介護保険サービス(デイサービスなど)は引き続きケアマネジャーが調整します。ただし訪問看護の指示は主治医が行います。
Q5. 別表7・8に該当するかどうかは誰に聞けばわかりますか?
A. まずは主治医か訪問看護ステーションの看護師に確認するのが最善です。訪問看護ステーションでは制度に詳しいスタッフが多く、「うちの患者さんは別表に当てはまりますか?」と気軽に質問できます。ケアマネジャーに相談する方法もあります。
Q6. 別表7に該当した場合、自己負担は増えますか?
A. 一概には言えません。医療保険の自己負担割合(1〜3割)と介護保険の自己負担割合(1〜3割)はほぼ同等ですが、高額療養費制度が適用されるため、医療費が高額になった場合には医療保険の方が上限額で守られやすい場合もあります。詳しくは主治医・医療ソーシャルワーカーに確認しましょう。
まとめ:別表7と別表8の違いをおさらい
別表7・別表8について、重要なポイントをまとめます。
- 別表7は「疾患名」で判断。19の特定疾患に該当すれば、介護認定があっても医療保険が優先される
- 別表8は「医療管理の状態」で判断。単独では介護保険のままだが、特例(高頻度訪問・長時間訪問)が使える
- 別表7・8のどちらかに該当すると、週4回以上の訪問・複数事業所の同時利用・1日複数回訪問が可能になる
- 別表7・8への認定は申請不要。主治医が訪問看護指示書で判断する
- 疑問があれば主治医・訪問看護ステーション・ケアマネジャーに相談する
在宅介護では、制度の仕組みを知っているかどうかで、受けられるサービスの質や量が大きく変わります。別表7・別表8は、重症の方や医療依存度の高い方が在宅で適切なケアを受けるための重要な制度です。
ご自身や家族が該当するかもしれないと感じたら、ぜひ主治医や訪問看護ステーションに確認してみてください。
関連記事:別表7・別表8の詳細解説
📋 別表7とは?訪問看護で医療保険が使える19の特定疾患をくわしく解説
別表7の全疾患の詳細、適用要件、実際の手続きについて詳しく解説しています。
🏥 別表8とは?訪問看護で医療保険が使える医療管理状態をくわしく解説
別表8の各状態の詳細と、介護保険との関係について詳しく解説しています。
