介護は「人と人との支え合い」で成り立つ仕事です。
利用者様やご家族への敬意を持ち、できる限り寄り添うのが介護職の基本姿勢。
ですが最近、「介護保険サービスの枠を超えた過剰な要求」「職員への一方的な言いがかり」など、いわゆる“クレーマー”のような対応を求められる事例が増えています。
本記事では、現場でよくあるケースと、介護職ができる対応・予防策について具体的に紹介します。
Contents
「お客様は神様です」ではない、介護現場の実情
接客業でよく聞かれる「お客様は神様」という言葉。
しかし介護現場は単なるサービス業ではありません。
- 命・安全・医療と関わる専門職
- 国の制度に基づく契約サービス
- 過剰サービスは制度違反になる可能性がある
介護保険サービスは公的制度のもとで提供されるもので、「できること」「できないこと」が明確に定められています。
その枠を超えた要望を繰り返されると、職員側の精神的疲弊はもちろん、サービスの公平性が損なわれることもあります。
現場で増えている“過剰要求”とクレームの具体例
🛒 ① 介護保険外の業務を依頼される
例:
- 掃除機がけや洗濯以外に「ついでに窓ふきもして」「家の草取りもお願い」
- 「スーパーで〇〇を買ってきて」「コンビニに振り込みに行って」
👉 本来、生活援助は“日常生活の最低限の支援”に限定されます。
それ以外は自費サービスや家族支援の領域になります。
📞 ② 頻回な電話、業務外の時間に要求される
例:
- 1日に何度も電話して「今すぐ来て」「次のヘルパーはもっと気が利く人にして」
- 職員の携帯に直接電話をかける
- 休みの日でも個人的な連絡が来る
👉 業務時間外の対応は、職員の私生活やメンタルに大きな影響を与えます。
事業所の電話体制や連絡ルールを守ってもらう必要があります。
🩺 ③ 医療的判断が必要なことへのクレーム
例:
- 「熱があるのに来ないのはどういうこと?看護師じゃなくても見てよ」
- 「薬が合ってない気がするから介護士が主治医に伝えて」
- 「トイレが近くて異常だと思う、すぐ受診させて」
👉 医療的判断は主治医や訪問看護師など、医療職が行う領域です。
介護職が独断で対応すると、責任問題につながります。
介護職がすべき対応・防衛策
📃 ① 契約書・重要事項説明書の見直しと再説明
クレームや要求が続く場合には、「契約書・サービス内容の再確認」が非常に有効です。
- 契約更新時に説明を徹底する
- 書面で残すことで、言った・言わないを防ぐ
- 家族が交代した場合も新たに説明の機会をつくる
📌 ② 記録を残す、職員間で共有する
- 電話のやり取りは日時・内容を記録する
- 家族対応履歴をチームで共有する
- 同じ職員ばかりが対応しないよう、ローテーション対応も有効です
🧑⚖️ ③ 外部支援機関への相談も視野に
- 地域包括支援センター(介護支援専門員も)
- 行政の介護保険担当窓口
- 場合によっては弁護士・自治体相談窓口へ
継続的なハラスメント行為(怒鳴る・脅す・嘘を拡散する等)は、職員の人権侵害にあたる可能性があります。無理をせず専門家の助けを。
本来の介護とは「協力してつくる支援」
介護は「職員が奉仕するもの」ではなく、本人・家族・専門職が協力して生活を支える仕組みです。
一方的な要求は、介護職の離職や制度の崩壊にもつながりかねません。
感謝や信頼の気持ちを大切にしながら、無理な要求にはルールをもって丁寧に対応する姿勢が必要です。
まとめ
項目 | 要点 |
---|---|
問題行動 | 過剰な要求・電話・医療判断の押し付けなど |
対応策 | 契約書の見直し/記録と共有/外部機関への相談 |
本質 | 介護は一方的なサービスではなく「協働による支援」 |
📌 最後に
「ご利用者様第一」は大切ですが、それは対等な関係性のもとで成り立つ信頼の表現であるべきです。
サービスの限界や制度のルールを守りながら、安心・安全な介護を提供するには、現場側も“NO”と言う勇気を持つ必要があります。
繰り返しトラブルが起きる場合は、契約内容の再確認・更新をおすすめします。
職員を守ることは、質の高い介護を守ることにもつながるのです。
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